
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. エグゼクティブサマリー
The Goldman Sachs Group Inc(GS)は、投資銀行(M&Aアドバイザリー・引受)、グローバル・マーケット(FICC・株式トレーディング)、および資産・ウェルスマネジメント(AWM)を三本柱とする世界最高峰の金融機関である。2026年上期の業績は歴史的な好調で、Q2'26(2026年4-6月期)はSEC EDGAR確定値で純収益(net revenues)$20,338M、希薄化EPS $20.98、純利益 $6,628M を記録した。前年同期(Q2'25)のEPS $10.91から+92%という劇的な増益であり、年率ROEは23.5%、ROTE(有形自己資本利益率)は25.5%に達した。これはM&Aサイクルの本格回復、株式トレーディング(+72%)、投資銀行フィー(+55%)、FICC(+32%)が同時に噴き上がった結果である。
ただしこの数値は「投資銀行=シクリカル(循環)株」という本質を強く意識して読む必要がある。Q2'26の急増は特定の一過性ディールや評価益によるものではなく、IB案件パイプラインとトレーディング環境が同時にピークに達した「サイクル頂点」の実力値である。裏を返せば、この23.5%というROEはノーマライズド(正常化)水準の13〜15%を大きく上回っており、持続不可能である。
新規エントリーは調整局面(P/TBV 2.6倍前後=$880台)での押し目を待つのが規律的である。
2. 事業構造と競争優位
セグメント構成(Q2'26 純収益 $20,338M)
| セグメント | Q2'26 純収益 | 前年比 | 内訳・特性 |
|---|---|---|---|
| Global Banking & Markets | $15,520M | +53% | 投資銀行フィー $3,395M(+55%)/FICC $4,592M(+32%)/株式 $7,416M(+72%) |
| Asset & Wealth Management | $4,597M | +20% | 運用資産(AUS)連動の安定フィー+インセンティブ収入 |
| Platform Solutions | $221M | -64% | Apple Cardローン評価減。売却(held-for-sale)進行中の縮小事業 |
Moat(経済的な堀)
- アドバイザリーの世界No.1フランチャイズ: グローバルM&Aリーグテーブルで常時トップ級。大型・複雑ディールでの信認は数十年かけて築かれたもので、資本を要さない「capital-light」な高収益源。
- トレーディングの規模とリスク管理: FICC・株式で世界有数のフロー・シェア。市場ボラティリティを収益機会に変える執行力とバランスシートは新規参入者が模倣困難。
- AWMの安定収益シフト: マネジメントフィー中心の反復収益(recurring revenue)へ構造転換を進めており、トレーディング依存の変動性を緩和する戦略的支柱。
- 人材・カルチャー・ブランド: トップティアの人材プールと「Goldman」ブランドが案件獲得の入口を握る。
SWOT
| プラス | マイナス | |
|---|---|---|
| 内部 | S: アドバイザリー首位/トレーディング規模/CET1 12.9%の資本厚み/ROTE 25.5%の資本効率/増配・自社株買いの積極還元 | W: 収益のシクリカル性が高く四半期変動が大きい/消費者金融(Platform Solutions)の戦略的後退で減損計上/純金利収入の金利感応度 |
| 外部 | O: M&Aサイクル回復の本格化/IPO・ECM市場の再開/プライベートクレジット・オルタナ運用の成長/AWM反復収益の拡大 | T: 景気後退・信用収縮でIB/トレーディング同時失速/規制強化(バーゼルIIIエンドゲーム等の資本規制)/市場ボラ低下でトレーディング収益減/競合(MS/JPM/エバコア)との案件競争 |
競争優位の総括: フランチャイズの堀は極めて深い。
3. 直近業績とファンダメンタルズ(SEC EDGAR確定値ベース)
四半期推移(純収益 / 純利益 / 希薄化EPS)
| 期 | 締め日 | 純収益 | 純利益 | 希薄化EPS |
|---|---|---|---|---|
| Q2'26 | 2026-06-30 | $20,338M | $6,628M | $20.98 |
| Q1'26 | 2026-03-31 | $17,227M | $5,630M | $17.55 |
| Q4'25 | 2025-12-31 | ~$13,450M | — | $14.01 |
| Q3'25 | 2025-09-30 | $15,184M | $4,098M | $12.25 |
| Q2'25 | 2025-06-30 | $14,583M | $3,723M | $10.91 |
- 通期2025(10-K確定): 純収益 $58,283M、純利益 $17,176M、希薄化EPS $51.32
- 通期2024(10-K確定): 純収益 $53,512M、純利益 $14,276M、希薄化EPS $40.54
- 直近12ヶ月(TTM)EPS: Q3'25 $12.25 + Q4'25 $14.01 + Q1'26 $17.55 + Q2'26 $20.98 = 約$64.79
バランスシート・資本(2026-06-30)
- 総資産: $2,127,711M / 株主資本: $122,742M / 現金: $187,266M
- BVPS: $367.67 / TBVPS: $336.61
- CET1比率: 12.9%(規制最低水準を約150bp上回る)
- 年率ROE: 23.5% / ROTE: 25.5%
資本還元
- 四半期配当を11%増配し$5.00/株へ(3Q26より)
- Q2'26に$4.0B(410万株)の自社株買い、配当と合わせ総還元 約$5.36B
一過性要因の裏取り(重要)
Q2'26の大幅増益は特定のワンタイム評価益ではなく、IB・株式・FICCの同時ピークという循環的実力値。逆に Platform Solutions は Apple Card ローンの評価減(マイナス要因)を含んでおり、コア好調が減損を吸収した構図。よって「一過性の押し上げ」による過大表示はないが、この収益水準そのものがサイクル頂点であり反復不可能という点が最大の論点である。