
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. エグゼクティブサマリー
Intuitive Surgical(ISRG)は、手術支援ロボット「da Vinci」を軸に軟部組織ロボット外科の世界標準を握る医療機器企業である。2026年6月末時点の da Vinci 設置台数は 11,710 台(前年比 +12%)に達し、既に世界中の主要病院に据え付けられた巨大な設置ベースが、消耗品(インストゥルメント&アクセサリー)とサービスという高粗利のリカーリング収益を毎四半期積み上げる構造を作り上げている。2026年 Q2 のリカーリング収益は $2.47B(前年比 +19%)で総収益の 85% を占め、システム販売という一過性売上への依存を大きく引き下げている。これは典型的な「ジレット=替刃モデル」であり、当社の economic moat の中核をなす。
直近の 2026年 Q2 決算(EDGAR確定値)は、売上 $2,892.3M(前年比 +18.5%)、営業利益 $971.9M、純利益 $818.1M、希薄化EPS $2.29 と、二桁増収・高収益を維持した。世界 da Vinci プロシージャ(手術件数)は前年比約 +15%、Ion(生検ロボット)は約 +36% で伸び、プラットフォーム全体では約 +16% 成長した。会社は通期の da Vinci プロシージャ成長ガイダンス 13.5〜15.5% を維持しつつ、非GAAP粗利率見通しを 68〜69% へ引き上げた。次世代機 da Vinci 5 の移行は順調で、Q2 のシステム設置 468 台中 246 台(約 53%)が da Vinci 5 であった。プロシージャ成長・設置台数・リカーリング比率という 3 つの品質指標がすべて健全であることが、当社ファンダメンタルズの強靭さを裏付ける。
一方で ISRG は恒常的に高PERで取引されるグロース株であり、TTM GAAP EPS ベースで約 45 倍、フォワード基準でも 40 倍前後という高いバリュエーションが最大の論点となる。
2. 事業構造と競争優位(Moat / SWOT)
事業セグメントとビジネスモデル
ISRG の収益は 3 本柱で構成される(2026 Q2 実績):
| セグメント | Q2 2026 売上 | 前年比 | 総収益比 | 性質 |
|---|---|---|---|---|
| インストゥルメント&アクセサリー | $1,730M | +18% | 約60% | リカーリング(消耗品) |
| システム(資本財) | 約$690M | — | 約15% | 一過性(設置) |
| サービス | $472M | +21% | 約16% | リカーリング(保守) |
| リカーリング計 | $2,470M | +19% | 85% | 高粗利・反復 |
システムを設置すればするほど、その上で行われる手術ごとに消耗品が消費され、年間サービス契約が積み上がる。設置ベース 11,710 台というインストール済み資産そのものが将来キャッシュフローの源泉であり、景気変動に対する強い緩衝材となる。
Economic Moat(持続的競争優位)
- スイッチングコストと臨床エコシステム: 外科医は da Vinci での術式トレーニングに数百時間を投じ、病院は手術室・ワークフロー・症例数を da Vinci 前提で最適化している。一度導入した施設が競合機に乗り換えるコストは極めて高い。
- スケールとデータ: 累積症例数(数千万件規模)とそこから得られる臨床エビデンス・アウトカムデータは後発が容易に追随できない。da Vinci 5 では 100 超のアップデート(テレプレゼンス、シミュレーション訓練、ケアチーム・ワークフロー)を展開中。
- リカーリング収益の粘着性: 消耗品・サービスが総収益の 85% を占め、収益の可視性・予測可能性が高い。
SWOT
Strengths(強み)
- 軟部組織ロボット外科の世界首位・圧倒的シェア
- 設置ベース 11,710 台・リカーリング収益 85%
- 高粗利(非GAAP粗利率 68〜69%)・潤沢な現金 $2,760M・実質無借金
Weaknesses(弱み)
- 恒常的高バリュエーション(EPS 期待の下振れに脆弱)
- 米国・一部術式(泌尿器・婦人科)への依存度が相対的に高い
- 大型資本財のためマクロ環境(病院設備投資)に一定感応
Opportunities(機会)
- da Vinci 5 移行による ASP・機能付加価値の向上
- Ion(肺生検)の高成長(+36%)と新術式・新地域展開
- 一般外科・胸部・大腸など適応拡大でプロシージャ TAM 拡大
Threats(脅威)
- 競合参入: Medtronic Hugo、J&J Ottava、中国勢(微創等)
- 中国テンダー停滞(新ロボット手術の診療報酬コード明確化が 2027 まで見込めず)
- 関税・入力インフレ(2026 年に売上比約 1% の関税影響)
3. 直近業績とファンダメンタルズ(EDGAR確定値ベース)
四半期推移(SEC XBRL 確定)
| 四半期(締め日) | 売上 | 営業利益 | 純利益 | 希薄化EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2025 Q1(〜3/31) | $2,253.4M | $578.1M | $698.4M | $1.92 |
| 2025 Q2(〜6/30) | $2,440.0M | $743.4M | $658.4M | $1.81 |
| 2025 Q3(〜9/30) | $2,505.1M | $759.7M | $704.4M | $1.95 |
| 2026 Q1(〜3/31) | $2,770.8M | $855.3M | $821.5M | $2.28 |
| 2026 Q2(〜6/30) | $2,892.3M | $971.9M | $818.1M | $2.29 |
通期推移(10-K 確定)
| 通期 | 売上 | 前年比 | 営業利益 | 純利益 | 希薄化EPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | $7,124.1M | — | $1,766.8M | $1,798.0M | $5.03 |
| 2024 | $8,352.1M | +17.2% | $2,348.9M | $2,322.6M | $6.42 |
| 2025 | $10,064.7M | +20.5% | $2,945.5M | $2,856.0M | $7.87 |
FY2025 は初の売上 $10B 超え、EPS は 2 年で $5.03 → $7.87 へ +56% 拡大。2026 年は Q1・Q2 で既に前年同期比 +23%/+18.5% 増収と勢いを持続している。
TTM(2025 Q3〜2026 Q2)と財務体質
- TTM 売上: 約 $11,034M(Q3'25 $2,505.1M + Q4'25 $2,866.2M * + Q1'26 $2,770.8M + Q2'26 $2,892.3M)
- * Q4'25 は FY25 通期 $10,064.7M から Q1〜Q3'25 を控除した推計値
- TTM 希薄化EPS: 約 $8.71
- 総資産 $20,876.6M / 株主資本 $18,168.4M / 現金 $2,760.4M(2026-06-30)
- 実質無借金・自己資本比率 87% と極めて健全なバランスシート。設備投資と R&D を自己資金で賄いつつ潤沢な現金を積み上げる。
2026 通期ガイダンス(会社見通し)
- da Vinci プロシージャ成長: 13.5〜15.5%(中間値近辺想定)を維持
- 非GAAP粗利率: 68〜69%(従来 67.5〜68.5% から引き上げ、関税影響 売上比 約1% 含む)
- Q2 非GAAP粗利率 70%(前払関税 $36M 還付を除くと 68.7%)