
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. エグゼクティブサマリー
ServiceNow(NOW)は、企業のワークフロー自動化を担う Now Platform を核とする世界最大級のエンタープライズSaaS企業である。2026年第2四半期(4-6月期)は、EDGAR確定値で総売上 $3,987M(前年同期比 +24%)、サブスクリプション売上 +24.5%、希薄化GAAP EPS $0.29 と、ガイダンスを上回る堅調な決算だった。cRPO(現在残存契約残高)は $13.2B(+21%)、RPO 総額 $29B(+21%)でいずれもガイダンス超過。年初来で株価が約38%下落した「SaaS総悲観」局面のなかで、ファンダメンタルズは減速どころか加速している点が最大の投資機会である。
同社の最大のカタリストは AI 収益化の実証である。Now Assist / Agentforce(エージェント型AI)を核とする AI ACV(年間契約額)が当四半期に初めて $1B を突破し、AI 純増 ACV は前四半期比 +40% 超で加速。エージェント型AIを本番運用する顧客数は9ヶ月前比で9倍に増加した。経営陣は2026年末までに AI ACV $1.5B、2030年までに AI が全 ACV の30%を占めるという長期目標に対し「先行している」と表明。更新率98%という圧倒的な顧客定着率と併せ、AIが「使われるか」ではなく「どれだけ速く収益化するか」の段階に入っている。
一方で株価が売られた背景には、(1) 2025年12月クローズの Moveworks 買収($2.4B)に伴う無形資産償却$219M・買収関連費用$75M・人員整理費$62Mが当四半期GAAP営業利益を$162M(GAAP営業利益率4%)まで圧迫したこと、(2) AIインフラコストでサブスク粗利率が82.5%へ低下、(3) 7月1日の価格改定が更新を前倒しし将来backlogを先食いしたとの懸念、がある。ただしこれらは会計上の一時費用と成長投資であり、非GAAP営業利益率は29.5%(通期ガイダンス31.5%)、通期FCFマージン35%と質は極めて高い。売上成長率+FCFマージンの「Rule of 50」は54%とピア(Workday/Salesforce/Microsoft各42%)を上回る唯一の存在。
2. 事業構造と競争優位(SWOT / Moat)
事業構造
ServiceNow は単一の統合プラットフォーム「Now Platform」上に、IT サービス管理(ITSM)を起点として、IT運用(ITOM)、カスタマー/従業員ワークフロー、そして近年はセキュリティ・リスク(CRM 化)へと拡張してきた。売上の約97%がサブスクリプション(Q2 サブスク売上 $3,877M / 総売上 $3,987M)で、極めて予測性の高いリカーリング収益モデルである。顧客は大企業・政府機関が中心で、$5M+ ACV 顧客が658社(+23% YoY)、$1M+ ACV 取引が四半期123件(+40% YoY 近く)と大型化が進む。
Moat(経済的な堀)
- スイッチングコストの高さ: Now Platform は業務プロセスの基盤に組み込まれ、更新率98%という数字が示す通り剥離が起きにくい。
- プラットフォーム・ネットワーク効果: 単一データモデル上で複数ワークフローが連結されるほど価値が逓増し、クロスセルが効く(1顧客あたり製品数の増加)。
- AIのデータ優位: 企業内の構造化ワークフローデータを保有するため、Now Assist / エージェント型AIが即座に業務コンテキストで機能する。汎用LLMベンダーが持たない「業務文脈」が参入障壁。
- 政府・規制セクター: 米連邦政府(US Federal)需要が強く、当四半期はオンプレ・サブスク売上の一部が前倒し計上されるほど。FedRAMP等の認証が競合排除に働く。
SWOT
- Strengths(強み): 98%更新率、Rule of 50 で業界唯一の50超(54%)、単一プラットフォームによるクロスセル、AI ACV $1B 突破の実証、通期FCFマージン35%。
- Weaknesses(弱み): 高い株式報酬(売上比16%)による希薄化、AIインフラ投資でサブスク粗利率が82.5%へ低下、GAAP利益率が買収費用で圧迫。
- Opportunities(機会): エージェント型AIの本番展開(顧客数9倍)、AI ACV $1.5B(2026末)→ 2030年に全ACVの30%、セキュリティが上位10製品で最速成長、CRM領域への侵攻。
- Threats(脅威): Salesforce/Microsoft/Workday との競合とAIバンドル圧力、マクロIT予算の減速、価格改定による更新前倒しの反動、超高PERゆえのバリュエーション調整リスク。
3. 直近業績とファンダメンタルズ(EDGAR確定値ベース)
すべて SEC EDGAR(XBRL)由来の確定値。分割後EPSで整合。
四半期推移(直近5四半期)
| 期(締め日) | 総売上 | 純利益(GAAP) | 営業利益(GAAP) | 希薄化EPS(GAAP) |
|---|---|---|---|---|
| 2026-06-30 (Q2) | $3,987M | $298M | $162M | $0.29 |
| 2026-03-31 (Q1) | $3,770M | $469M | $503M | $0.45 |
| 2025-09-30 | $3,407M | $502M | $572M | $2.40※ |
| 2025-06-30 | $3,215M | $385M | $358M | $0.37 |
| 2025-03-31 | $3,088M | $460M | $451M | $0.44 |
※2025-09-30 の $2.40 は税制優遇等による一時的な純利益押し上げに伴う値(他四半期と単純比較不可)。
通期推移
| 通期 | 総売上 | 純利益(GAAP) | 営業利益(GAAP) | 希薄化EPS(GAAP) |
|---|---|---|---|---|
| ~2025-12-31 | $13,278M | $1,748M | $1,824M | $1.67 |
| ~2024-12-31 | $10,984M | $1,425M | $1,364M | $1.37 |
| ~2023-12-31 | $8,971M | $1,731M | $762M | $1.68 |
売上は2023→2025で $8,971M→$13,278M と2年で約48%成長。当四半期の総売上成長率+24%は大型SaaSとして極めて高水準。
Q2 2026 の質的指標(IR / 決算リリース)
- cRPO: $13.2B(+21% YoY、恒常通貨 +21.5%)、ガイダンス超過。RPO 総額: $29B(+21%)。
- 非GAAP営業利益率: 29.5%(ガイダンス比+300bp)。GAAP営業利益率: 4%(Moveworks買収一時費用が主因)。
- 非GAAP純利益: $930M(GAAP $298M との差は無形償却$219M・買収費用$75M・人員整理$62M・株式報酬等)。
- FCF: $634M(当四半期FCFマージン16%、通期ガイダンスは35%)。
- AI ACV: $1B 突破、純増AI ACV は前四半期比 +40% 超、更新率98%。
FY2026 ガイダンス
- 非GAAPサブスク粗利率 81% / 非GAAP営業利益率 31.5% / FCFマージン 35%
- Q3 cRPO 成長率ガイダンス: +20%(FX逆風 -$35M 想定)
GAAP利益の落ち込みは Moveworks 買収($2.4B、2025-12-15クローズ)に伴う会計上の一時費用であり、キャッシュ創出力・成長の質は毀損していない。むしろ AI 収益化の加速がファンダメンタルズの中核テーマである。