
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. エグゼクティブサマリー
Oracle は、レガシーなデータベース/ERP ソフトウェア企業から、AI インフラ時代の「第4のハイパースケーラー」へと歴史的な変貌を遂げている最中にある。FY2026(2026年5月末締め)通期は売上 $67,357M(前年比 +17%、SEC EDGAR 確定値)、GAAP 純利益 $17,087M(+37%)、GAAP 希薄化後 EPS $5.83(+34%)と過去最高を更新した。牽引役は OCI(Oracle Cloud Infrastructure)で、第4四半期の IaaS 売上は $5.8B と前年比 +93% の爆発的成長を示した。この成長の背骨が受注残(RPO)であり、期末 RPO は $638B(前年比 +363%、四半期比 +$85B) に膨張した。これは AI 学習・推論向け大型クラウド契約(OpenAI 等)の獲得によるもので、将来収益の可視性という点では他のハイパースケーラーをも凌ぐ規模である。
一方で、この成長は巨額の先行投資(Capex)と表裏一体である。FY2026 の Capex は $55.7B(売上の 82.6%)に達し、営業CF $32.0B を上回った結果、フリーキャッシュフローは −$23.7B のマイナスに転落した。FY2027 の Capex ガイダンスは最大 $95B(顧客償還分を除く純額でも約 $70B)、有利子負債は約 $167B に膨張し、S&P はレバレッジが BBB 格の閾値 4x を超え 4.5x に達すると見る。すなわち ORCL は「AA 格のバランスシートを持つ MSFT/AMZN/GOOGL とは異なり、BBB 格の財務基盤で、既にFCFマイナスの状態から、ハイパースケーラー規模の設備投資を賄おうとしている」構図にある。ここに本銘柄の最大の論点=成長の確実性 vs 資金繰り・FCF圧迫リスクの綱引きがある。
現在株価 $150.52 は、FY2027 非GAAP EPS ガイダンス $8.05 に対し予想PER 約18.7倍、GAAP FY2026 EPS $5.83 に対し実績PER 約25.8倍。RPO の異次元の伸びと $90B(FY27)→ さらにその先の売上加速シナリオを踏まえれば、この水準は「成長を織り込みきっていない押し目」と評価できる。
2. 事業構造と競争優位(Moat / セグメント / SWOT)
セグメント構造(FY2026)
| セグメント | 概要 | FY26 の動き |
|---|---|---|
| Cloud Services & License Support | 収益の柱。OCI(IaaS)+ SaaS(Fusion ERP/NetSuite)+ DB ライセンスサポート | OCI(IaaS) Q4 +93%、SaaS +10%、MultiCloud DB +404% |
| Cloud License & On-Premise License | 新規ライセンス販売 | AI 需要で DB ライセンスも底堅い |
| Hardware / Services | Exadata、コンサル等 | 相対的に小さく成長寄与は限定 |
Moat(競争優位の源泉)
- エンタープライズDBのロックイン: Oracle DB は世界の基幹系(金融・政府・製造)に深く根を張り、移行コストが極めて高い。この既存顧客基盤に OCI をアップセルできる。
- MultiCloud 戦略: Azure/AWS/Google のデータセンター内に Oracle DB を同居させる「Oracle Database@Azure」等が +404% と爆発。競合ハイパースケーラーを敵に回さず、その顧客基盤に相乗りする独自ポジション。
- AIインフラの後発優位: RDMA ネットワーク・ベアメタルGPUクラスタで学習効率に強み。OpenAI 等の超大型契約を、先行3社が容量制約に陥る中で獲得できている。
- 垂直統合アプリ(Fusion/NetSuite): SaaS で ERP の粘着収益を確保。
SWOT
- Strengths(強み): 異次元のRPO($638B)=将来収益の圧倒的可視性/既存DB基盤のクロスセル/MultiCloudの独自ポジション/高い営業利益率(GAAP営業利益率 約31%)
- Weaknesses(弱み): FCFマイナス(−$23.7B)/BBB格・高レバレッジ($167B債務)/Capexの売上比82.6%という異常な資本集約度/SaaS成長率(+10%)は競合より鈍い
- Opportunities(機会): AI学習・推論需要の構造的拡大/電力確保できれば容量=売上に直結/RPOの12%($76.6B)が今後12ヶ月で収益転換
- Threats(脅威): 大型契約の顧客集中(OpenAI等の信用・支払能力リスク)/GPU・電力・DC用地の供給制約/金利上昇時の借換えコスト/ハイパースケーラー3社の価格・容量攻勢/AI設備投資バブル懸念
3. 直近業績とファンダメンタル(SEC EDGAR 確定値ベース)
通期推移(10-K, 締め日ベース)
| 指標 | FY2024 (~2024-05) | FY2025 (~2025-05) | FY2026 (~2026-05) |
|---|---|---|---|
| 売上 | $52,961M | $57,399M | $67,357M(+17.4%) |
| 営業利益 | $15,353M | $17,678M | $20,606M(+16.6%) |
| 純利益 | $10,467M | $12,443M | $17,087M(+37.3%) |
| 希薄化EPS | $3.71 | $4.34 | $5.83(+34.3%) |
四半期推移(10-Q, 締め日ベース)
| 四半期(end) | 売上 | 営業利益 | 純利益 | 希薄化EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2024-11-30 | $14,059M | $4,220M | $3,151M | $1.10 |
| 2025-02-28 | $14,130M | $4,358M | $2,936M | $1.02 |
| 2025-08-31 (FY27 Q1) | $14,926M | $4,277M | $2,927M | $1.01 |
| 2025-11-30 (FY27 Q2) | $16,058M | $4,731M | $6,135M | $2.10 |
| 2026-02-28 (FY27 Q3) | $17,190M | $5,464M | $3,721M | $1.27 |
バランスシート(EDGAR)
- 総資産: $261,759M(2026-05)— 前年から急拡大(DC資産の積み上げ)
- 株主資本: $42,508M(薄い自己資本=高レバレッジの裏返し)
- 現金: $31,289M
- 有利子負債: 約 $167B(Web報道値)、S&P 調整後レバレッジ約 4.5x
キャッシュフローの構造変化(最重要論点)
- 営業CF: 約 $32.0B(堅調)
- Capex: $55.7B(FY26、売上の 82.6%)
- FCF: −$23.7B(マイナス転落)
→ Oracle は「収益は超成長・キャッシュは超先行投資」というハイパースケーラー型の資本サイクルに突入。FCF がいつプラスに転じるか(=Capex 投下したDC容量が RPO を収益転換し始めるタイミング)が株価の最大の分水嶺。