
この銘柄、まずは"分析"からいっしょに見ていきましょう。
事業と業績までを無料で公開しています。バリュエーションと"結論"パートは、筆者の個人用メモとして非公開にしています。
1. エグゼクティブサマリー
Walmart Inc(WMT)は世界最大の小売企業であり、年商 $706B(FY2026、締め日 2026-01-31、SEC 10-K 確定値)を誇る。直近 Q1 FY2027(締め日 2026-04-30、10-Q 確定値)では売上 $175,684M(純売上ベース +7.1%)、営業利益 $7,493M、純利益 $5,330M(前年同期 $4,487M から +18.8%)、希薄化EPS $0.67 と、増収を上回る営業利益・純利益の伸びを記録した。グローバルeコマースは +26%、グローバル広告は +37%、会員収入は +17% と、利益率の高い成長エンジンが二桁で伸長している。
現在株価 $115.27 に対し、EDGAR ベースの TTM 希薄化EPS は約 $2.88(直近4四半期:$0.67+$0.77+$0.88+$0.56)、TTM 純利益は約 $22,986M。小売株としては歴史的にもピア対比でも突出したプレミアムであり、成長の質は本物だが「値段は既にかなり織り込まれている」水準にある。
総合すると、事業のクオリティ・堀・利益ミックス改善は S&P500 屈指の優良さだが、40倍の株価倍率は将来の高成長を相当程度先取りしている。関税コスト増・マージン圧迫・消費減速が顕在化すれば、この高倍率は下方リスクとして効き得る点に留意する。
2. 事業構造と競争優位
セグメント構造
Walmart は3つの報告セグメントで構成される。
- Walmart U.S.(売上・営業利益の中核。実店舗+店舗起点のeコマース=ピックアップ/デリバリー)
- Walmart International(メキシコ Walmex、中国、カナダ、フリップカート等)
- Sam's Club(会員制ウェアハウス。会費収入が利益に直結)
これらに横串で乗るのが高マージンな新収益層——Walmart Connect(リテールメディア/広告)、Walmart+(サブスク会員)、マーケットプレイス手数料・フルフィルメント(WFS)、データ・フィンテックである。FY2026 でグローバル広告は約 $6.4B(全社売上の1%未満)に過ぎないが、広告+会員費の合計は四半期営業利益の約3分の1を占めるところまで来ており、P&L の質を静かに、しかし劇的に変えつつある。
Moat(経済的堀)
- 規模の経済とコスト優位:世界最大の購買力と物流網により、EDLP(毎日低価格)を持続可能な形で提供でき、インフレ・関税局面ではむしろ相対的な価格競争力(=客足=シェア)が高まる。
- 物流・店舗ネットワークの二重活用:全米人口の約9割が Walmart 店舗の至近に住む立地を、ラストマイル配送拠点として転用。この「店舗=ミニ物流センター」構造は Amazon にも模倣困難。
- データ×リテールメディアのフライホイール:巨大なファーストパーティ購買データが Walmart Connect の広告価値を押し上げ、その高マージン収益を EDLP の価格投資に還流させ、さらに客足とデータを増やす好循環。
SWOT
- Strengths: 圧倒的な規模・EDLP・物流網、53年連続増配の財務体力、二桁成長の高マージン事業(広告・会員・マーケットプレイス)、店舗起点デリバリーの構造優位。
- Opportunities: リテールメディアの拡大(VIZIO買収でCTV広告参入)、eコマース黒字化の進展、Walmart+ の会員拡大(Peacock等の特典追加)、フィンテック・ヘルスケア。
- Threats: 関税による調達コスト増と価格転嫁リスク、消費者の実質所得悪化、Amazon・Costco・Temu/Shein 等との競争、高倍率ゆえのマルチプル収縮リスク。
3. 直近業績とファンダメンタルズ(EDGAR 確定値ベース)
通期推移(10-K / DEF 14A 確定値)
| 指標 | FY2024 (~2024-01-31) | FY2025 (~2025-01-31) | FY2026 (~2026-01-31) |
|---|---|---|---|
| 売上 | $642,637M | $674,538M | $706,413M |
| 営業利益 | $27,012M | $29,348M | $29,825M |
| 純利益 | $15,511M | $19,436M | $21,893M |
| 希薄化EPS | $1.91 | $2.41 | $2.73 |
売上は3期で +9.9%、純利益は +41%、EPS は +43% と、利益がトップラインを大きく上回って伸びる利益ミックス改善が明確に確認できる。営業利益の伸び(FY26 は前期比横ばい気味)に対し純利益・EPS が大きく伸びたのは、投資収益・持分法・税務等の下支えもあるが、基調としては高マージン事業の寄与拡大が効いている。
直近四半期(Q1 FY2027、締め日 2026-04-30、10-Q 確定値)
- 売上 $175,684M(純売上 +7.1%、会員・その他収入は +27% で $2.06B)
- 営業利益 $7,493M(前年同期 $7,135M)
- 純利益 $5,330M(前年同期 $4,487M、+18.8%)
- 希薄化EPS $0.67(調整後EPS $0.66)
- グローバルeコマース +26%、グローバル広告 +37%、Walmart Connect(VIZIO除く)+41〜44%、会員費 +17%
関税コストは週次で上昇が続き、下期にかけ価格転嫁と需要予測の難度が増すとしている。
財務健全性(10-Q、2026-04-30)
- 総資産 $289,607M / 株主資本 $94,330M / 現金 $10,729M
- 53年連続増配。配当利回りは約0.86%と低いが、自社株買いと合わせた総還元は厚い。
- TTM(EDGAR 直近4四半期積上げ):売上 約$693,184M、純利益 約$22,986M、希薄化EPS 約$2.88。